文系Carassius

文化とフナとの接点を探る・・・それが「文系Carassius


その1 鮒と言葉

 文化なんて大上段に構えてもしょうがないので、まずは「鮒」が出て来る言葉を見てみましょう。

轍鮒の急(てっぷのきゅう):

1)切羽詰まった様子。2)援助は適切なタイミングで行わなければ意味が無いという例え。

 古代中国の思想家、荘子の言動をまとめた思想書『荘子』(ややっこしい...)に出て来るお話。

 荘子がお金に困って知り合いの領主に無心に行った時、『秋には税収が入るから、秋になったらお金を貸しましょう。』と言われて腹を立てて次のような例え話をしました。

 荘子が自分の思想を広める為に各地を旅している時、足下から呼び掛けられたので見てみると、轍(わだち)に溜った水の中に一尾の鮒いました。話を聞いてみると『この轍の水はやがて干上がってしまいますから、一杯でも二杯でもいいですから水を下さい。』と言います。そこで荘子が『それでは、私はこれからこの国の王のところに遊説にいきますから、川の水をここに引くように頼みましょう』と言うと、鮒は『今、一杯でも二杯でも水をもらえれば助かるのですが、そんなに先のことでは私は死んでしまいます。今度合う時は(日本でいえば)乾物屋の店先です。』と怒って言いました。

鮒侍(ふなざむらい):どこにでもいる鮒というつまらない魚のようにつまらない侍という意味。

 日本人なら多分誰でも知っている、年末になると必ずどこかで上演される、あのお話、仮名手本忠臣蔵の劇中で、当時権勢を誇っていた吉良上野介が、江戸城中での礼儀作法に疎かった田舎者の浅野匠守を罵ってこう言ったのです。(もちろんこれは作品中での話で、本当のところは分かりません。)